テレワークの推進
新型コロナウイルス感染対策として、一気に認知されたテレワークという働き方。利便性が高まるという理解が進む一方で、セキュリティ対策、労務管理などクリアすべき課題や、そもそも自社の業務に活用できるのかといった疑問などから、当地岡山の中小企業での導入の動きは鈍いのが実態です。
しかしながら、アフターコロナを見据える中で、中小企業にこそ、テレワークによって経営力が向上する可能性が期待されています。テレワークの導入を支援している専門家の声と、テレワークを実践している地元企業の事例を紹介します。
専門家の声
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一般社団法人日本テレワーク協会 事務局長 村田 瑞枝 氏 |
1991年日本電信電話株式会社入社。 人事部人材開発室を経て、マルチメディアビジネス開発部に所属。 以降、25年間WEB戦略策定及び実施サポート、システム構築、デジタルマーケティングなどインターネット関連業務に携わる。 中小企業診断士。1級ファイナンシャルプランニング技能士。ファイナンシャルプランナー(CFP)、WEB解析士、ロングステイアドバイザー。 |
コロナ禍で外に出てはいけないという理由で、いきなり在宅勤務を強要された方は少なくありません。出勤前提の仕事をそのまま在宅で実施したので、生産性が上がらないという話も聞きます。その一方、テレワークを少なからず実施した結果、テレワークでも仕事ができると気づいたという声も。特に若い方からは、上司がテレワークをさせてくれないといった相談も受けるので、経営者の方は、今一度、従業員の声に耳を傾けていただきたいと思います。
そもそも、テレワークは就業者のワークライフバランスの向上に繋がり、特に通勤時間削減による時間の有効活用については、多くの方が実体験をしました。テレワークが前提であれば、従業員を近隣で探す必要はありません。実際にテレワークを導入したことにより離職者が出なくなった、求人したら従来の何十倍も応募が来た、といった話もめずらしくないのです。むしろ、テレワークをさせてもらえないという理由で離職者が続出したという相談も受けています。
もちろん、成果を出すためには、従来の業務のままテレワークを導入するのではなく、一度しっかり業務の洗い出しをする必要があります。このフローは、業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)化と同じなので、テレワークの導入のみでなく、DX化による生産性向上を目指した取り組みをお願いしたいと思います。まずは聞き取り、観察をして各人の務を把握。同時に各人の得意な仕事、苦手な仕事を把握する必要があります。業務内容がある程度、形式知化されたら、「①絶対にやらなければならない業務」と「②やらなくてよいかもしれない仕事」に分けてみましょう。②はまずは全面的にやめてみて、必要になったら考えればいい。ハンコを全面廃止としたがまったく支障がなかったという例もあります。あとは、①をそれぞれ得意な人に割り振っていく。もちろん、最初からベストな業務分担を実現することは不可能なので、メンバー同士の組み合わせや業務分担も含め試行錯誤を繰り返すことが必要です。
これからは、「生き方改革」が重視される時代。苦手分野を克服する必要はなく、自分の得意な仕事で企業や社会に貢献する。そもそも、各自が得意なことも苦手なこともやるよりは、うまく手分けして得意なところだけやるほうが効率的で幸福度も高い。また、業務を細分化することにより、フルタイムの出勤が前提では就労機会が得られなかった方も仕事に就くことができる。意思決定の早い中小企業だからこそ、こういった人材を有効活用し、短期間で生産性向上に繋げることができるのです。
テレワーク実践企業の事例
株式会社シーズ
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株式会社シーズ 代表取締役 平川 清高 氏 |
企業概要 ●岡山県岡山市北区駅元町30-3(本社) ●電話 086-251-3730 ●URL https://www.seedsjp.com/ ●事業内容 新卒採用支援、採用アウトソーシングサービス、採用コンサルティングサービス、正社員・アルバイト求人メディア運営、人材紹介サービス など ●従業員数 30名 (2021年9月現在) |
当社は女性がスタッフ全体の2/3を占めており、以前から、子育て中の女性スタッフを中心に、在宅ワークを導入してほしいとの声があがっていました。私も必要性を感じ、2019年12月から実験的に在宅ワークを開始していたのですが、コロナ禍の発生を機に、本格的に導入に踏み切りました。
テレワーク導入にあたっては、通信環境の整備や就業規則、社内ルールの設定など、さまざまな環境を整える必要があったので、社労士とも相談して規定整備を進めました。現状、クラウドサービスなどを活用して、ほとんどのスタッフがリモートで業務にあたっています。「出勤しなくていいので、もうテレワーク以前には戻れません」という声があがるほど、スタッフからは好評です。
通勤時間を削減できた分、業務の生産性は上がっていますし、心配していたコミュニケーション不足も、部署ごとのオンラインミーティングを1日3回定例化したことで、以前よりもむしろ情報共有が進んでいるように感じます。ちょっとしたことを画面上で隣の人に話しかけられるクラウドツールも活用しています。
テレワークの導入によって、スタッフ募集を行う際にも非常にメリットを感じています。特に、女性スタッフについては、柔軟な働き方を提案することで優秀層の確保が可能になっています。
今後は、リモート運営のメリットを最大限活かすため、現在活用しているマーケティングオートメーションをバージョンアップするなどして、更なる営業活動の効率化や、営業エリアの拡大を目指していきたいと思っています。
テレワーク支援策情報
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/telework_zyosei_R3.html
良質なテレワークを新規導入・実施することにより、労働者の人材確保や雇用管理改善等の観点から効果をあげた中小企業事業主が助成対象となります。
<助成対象となる経費の範囲>
① 就業規則・労働協約・労使協定の作成・変更
② 外部専門家によるコンサルティング
③ テレワーク用通信機器の導入・運用
④ 労務管理担当者に対する研修
⑤ 労働者に対する研修
<支給額>
○機器等導入助成
1企業あたり、支給対象となる経費の30%
※ただし以下のいずれか低い方の金額を上限とする。
・1企業あたり100 万円
・テレワーク実施対象労働者1人あたり20 万円
○目標達成助成
1企業あたり、支給対象となる経費の20% (生産性要件を満たす場合35%)
※ただし以下のいずれか低い方の金額を上限とする。
・1企業あたり100 万円
・テレワーク実施対象労働者1人あたり20 万円
支給要件等、詳細はご確認ください。
お問い合わせ先 岡山労働局 雇用環境・均等室 TEL.086-224-7639
https://www.it-hojo.jp/
中小企業・小規模事業者がITツール導入に活用できる補助金です。テレワークを実施するためにクラウド型の勤怠管理システムとWEB会議システムを導入することで非対面化と効率化を実現する場合などに活用できます。
○補助率:2/3以内
○補助金額:30万円~150万円(テレワーク対応類型の場合)
○補助対象経費:ソフトウェア、クラウド利用費、専門家経費、PC・タブレット等のレンタル費用など
お問い合わせ先 サービス等生産性向上IT導入支援事業 コールセンター
TEL.0570-666-424(ナビダイヤル)/042-303-9749 (IP電話等から)
https://teleworkmanager.go.jp/
テレワークによる効果の説明、テレワークに適したシステム(在宅勤務などを行うためのICT 機器、システム)や情報セキュリティ、勤怠労務管理、その他テレワーク全般に関する情報提供・相談、導入に向けての支援等を行います。
○支援の方法:WEB 会議・電話または派遣訪問
○支援上限回数: なし(派遣訪問は1企業・団体あたり3 回まで)
○1回当たり支援時間:最大6 時間まで
※ 1 回1~ 2 時間程度、3 回前後実施が目安です。
○費用 コンサルティング費用:無料
コンサルティングにかかる通信費:実費負担
※ 電話料金やネット通信料、有料WEB 会議システム利用料
お問い合わせ先 テレワークマネージャー相談事業 事務局(㈱NTT データ経営研究所)TEL.044-299-7084
https://telework.mhlw.go.jp/
「テレワークを導入したい」「企業の取り組み事例を知りたい」「利用できるサテライトオフィスを知りたい」などテレワークに関する様々な情報を発信しています。
https://japan-telework.or.jp/
「テレワーク緊急導入支援プログラム」など、テレワーク支援情報を紹介しています。
(一社)岡山県商工会議所連合会 テレワークの導入実態についての調査結果
https://www.okayama-cci.or.jp/wp-content/uploads/2021/09/1051b7ca8f5f79b64b8f3202eebca371.pdf
調査方法 FAX・WEBによるアンケート
調査時期 令和3年6月上旬~中旬
回答企業 県下商工会議所会員企業520社
(製造業 178社、建設業 88社、卸売業 68社、小売業 77社、サービス業 109社)
https://www.okayama-cci.or.jp/wp-content/uploads/2021/09/7993fb1f3c8e352de9bc37e9484e24ab.pdf
調査方法 FAXによるアンケート
調査時期 令和2年6月上旬~中旬
回答企業 県下商工会議所会員企業474社
(製造業 165社、建設業 78社、卸売業 57社、小売業 77社、サービス業 97社)